中国の図書館の電子化の近況

以前のシン担当の記事「著作権法改正」で日本の著作権法改正の話題を取り上げ、日本以外の著作権法が進んでいるアジアの国の一つとして韓国の図書館の電子化の事例を紹介しましたが、近年著しい経済成長で注目されている中国の図書館でも電子化が国を挙げて推進されているようです。

紙媒体の資料を電子化し、ウェブ上で提供するサービスが中国で始まったのは1999年頃からです。中国語雑誌のアーカイブサービス「中国期刊網」(Chinese Journal Network)のような大学図書館などの公共機関をサービス対象とするものと、「超星数字図書館」(Super Star Digital library) (ちなみに「数字」とは中国語で「デジタル」の意味。)のように個人をサービス対象とするものがあります。

今回は、個人をサービス対象とする超星数字図書館についてご紹介しましょう。

1.「超星数字図書館」の概要

「超星数字図書館」は電子化した図書の全文データをウェブ上で利用者に提供するという形のサービスを、中国で最初に始めた電子図書館です。利用者は100元(日本円で約1,330円)の「超星読書カード」(有効期間一年)を購入すれば、誰でも自宅やオフィスから図書館の蔵書30万冊以上を読むことができます。(ただし、カード購入のためには、中国の銀行に口座がなければ難しいでしょう。)

図書は、PDFに似た独自のPDGという形式で画像データとして電子化されています【注1】。
利用者はPDG形式専用のブラウザ「SSReader」を使用し、オンラインで読むことも、ファイルをダウンロードしてオフラインで読むことも可能です。

また、ダウンロードした図書のデータはプリントアウトもできます。同館は哲学、思想、歴史などの人文科学、政治、経済などの社会科学、数学、物理などの自然科学の各分野について、一般書から研究書まで幅広く収集しています。一部、雑誌や年鑑などの定期刊行物類も一含まれています。

「超星数字図書館」は、図書館などの資料の電子化を手がけてきた「世紀超星公司」と、省立の図書館では中国有数の蔵書数370万冊以上を誇る「広東省中山図書館」との提携で、2000年1月に公開されました。開館以降も、他の図書館と提携を結び、それらの図書館の蔵書を次々と電子化しています。

画像データによる電子化では、テキスト文書のように全文検索することは困難ですが、入力ミスによる誤字の問題がなく、図、挿絵などをそのままの体裁で載せることができます。そして何より、全文のテキストデータ化よりも、効率が格段によいという利点があります。

この点、書籍の全データを検索可能なデータとしてデジタル化を進めているGoogleとは対照的ですが、書籍をスキャンしてOCR(光学式文字読取)処理してテキスト化するには、年々OCRソフトの認識精度が上がってきているとはいえ、中国語などの複雑な漢字を持つ言語などではOCR処理後のチェックと訂正に大変な手間がかかるため、よほどの予算がなければGoogleのようなやり方は難しいのではないでしょうか。

2.超星数字図書館の著作権対策

中国では、著作権法が1990年に成立、さらに2000年改正法で電子出版物やネットワーク系出版物の著作権保護が強化されるようになりました。中国の著作権法では、著作権が保護される期間が著作権者の死後50年とされており(これは日本と同じ)、超星数字図書館で閲読できる図書の多くが著作権の存続する図書であるため、以下のような著作権保護の対策をとっています。

a) ダウンロードした図書データをプリントアウトできるのは月間1,000ページまでに制限。
b) ダウンロードした図書は「超星読書カード」の有効期限内しか閲読できません。
c) 「超星数字図書館」への収集は可能な限り、出版されて2年以上経過したものに限り、また、収集は学術的、資料的価値の高いものに限ります。
d) 著作権者に対しては、使用報酬として、有効期限10年間の「超星読書カード」(1,000元相当)を贈るか、「超星読書カード」の売り上げの一部を、著作権を有する図書がダウンロードされた割合に応じて、著作権者に支払います。
e) 著作権者から依頼があれば、電子化に同意した後でも図書データの提供を取りやめます。

著作権者に対する使用報酬の分配は、中国の政府機関である中国版権保護センターの監督のもとで行われています。「超星数字図書館」が講じたこれらの著作権対策は、現在の中国における著作権処理方法を示すものと考えてよいでしょう。

3.まとめ
実は、この「超星数字図書館」以外にも、政府や中国国家図書館が中心になって進めてきた「中国デジタル図書館プロジェクト(中国数字図書館工程)」の成果として建設された「中国数字図書館」も、同様の方法で著作権の存続する紙媒体の図書データをウェブ上で提供するサービスを行なっていました。

ところが、その蔵書の中に許可なく無断でウェブ上で公開したものがあったとして、著作権者が中国数字図書館を訴えました。2002年6月北京市海淀区人民法院において、同図書館の著作権侵害が認められ、損害賠償をすべきであるという判決が下りました。現在、中国数字図書館のホームページは図書データへのリンクが切れ、更新もされておらず、事実上閉鎖された状態です。

電子図書館の構築は中国の国家プロジェクトの優先項目として多額の費用をかけて進められ、その進展も開始から2、3年は目を見張るものがありましたが、最近のGOOGLE訴訟の場合と同じく、図書の電子化をはばむのはやはり著作権の問題のようです。

とはいえ、これらのデジタル図書館の需要は高まることはあっても、なくなることはないと思われます。
例えば、2003年に新型肺炎(SARS)が流行したため、中国の公共図書館等が来館者サービスを停止したり、開館時間を短縮するなどの措置が取られ、図書館の来館者サービスが大きな制約を受けたこともあります。
これに比べて、オンライン型の図書館はパソコンと通信環境さえあれば、外出することなく、自宅にいながら本を借りたり閲覧できるので、このような問題もないわけです。
特に最近は新型インフルエンザの流行も懸念されており、ますますオンライン型の図書館は増えて行くのではないでしょうか。

【注1】PDG形式で電子化された図書データを専用ブラウザで読むという「超星数字図書館」の方法は、中国国内外の500を超える図書館が蔵書の電子化を行うにあたって採用しているそうです。

★以上の記事については、カレントアウェアネス・ポータルという、図書館界、図書館情報学に関する最新の情報をお知らせする、国立国会図書館のサイトを参考にさせていただきました。

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