iPad vs Kindle

昨年10月、Amazonで無線通信対応のブックリーダー端末“Kindle”が販売され始めましたが、それにも増して前評判、発売後ともに大いに注目されているのが、5月28日にApple社から発売された携帯端末の“iPad”です。

弊社も業務内容の一部に電子ブック作成を掲げている関係上、研究用に1台購入したのですが、本当に正面から見るとガラス板のようです。タッチスクリーン式の大きなカラー画面を備えながら、電池も最大で10時間持つそうです。ネット上でも、「iPadを見たあとでは、kindle等の他のブックリーダーはもはや時代遅れに感じられる」という意見があるのもうなずける気がしました。

電子書籍リーダーという観点から「AppleのiPad vs AmazonのKindle」という比較がされることが多いですが、形が似ていてもその開発のコンセプトは全く異なるようです。両機には多くの違いがありますが、その中でも特に3つの大きな違いについて見てみましょう。

1.画面

まず見た目で一番の違いがこの部分でしょう。iPadのカラーに対してKindleのモノクロ。見た目で魅力的なのはもちろんカラーなのは間違いありませんが、この違いにこそ、両端末の開発コンセプトの違いが一番はっきり出ていると言えます。
すなわち、iPadがゲーム・音楽・動画・書籍などのマルチメディアの総合端末であるのに対して、Kindleはあくまで電子書籍リーダーに特化した端末だということです。

確かにKindleの画面はモノクロで、カラーに比べると見劣りしますが、Kindleの画面に使用されているのは一般的なバックライト付きの液晶ではなく、電子ペーパーと呼ばれる液晶であり、これにはバックライトを使用しないので、長時間見ても目が疲れにくいという利点があります。ある実験結果によると、電子ペーパーを一定時間見る場合の目の疲労感は、通常の本を同時間読むのと比べてほとんど変わらないそうです。

また、電子ペーパーはデータの書き換えの際にしか電力を消費しないので、同じページを表示している間は原理的に電力を消費せず、これはバッテリーの持ちがよいということにつながります。このためKindleは無線通信をONにした通常使用で約1週間、無線通信をOFFにすれば最長で2週間電池が持つと言われています。
ただし、この電子ペーパーの特性は、動画は原理的に再生できず、画面の書き換えに時間がかかるので、スムーズなページめくりが困難などの欠点も伴います。

ここまでの結論を言えば、マルチメディアの再生には圧倒的な強みのあるiPadのカラー液晶大画面も、電子書籍端末という点に限って見ると、逆に長時間見続けると目が疲れる、電池の持ちも悪いという欠点にもなるということがわかります。

2.書籍のデータ形式

Kindleは独自の書籍フォーマット(以下、“Kindle books”と呼びます。)を採用していましたが、iPadでは“ePub”と呼ばれるオープンな業界標準のフォーマットを採用しました。これにより、出版社側ではePub版のデータさえ用意すれば、今後現れてくるであろう様々な電子書籍リーダーにそのまま対応できることが見込めるため、出版社の電子書籍分野への参入がしやすくなるでしょう。iPadがこのフォーマットを採用したことで、今後Amazonもこのフォーマットに対応せざるをえなくなるであろうという見方もあります。

ところが、Appleの電子書籍コンテンツである“iBooks”は、確かに業界標準のePub形式を採用するものの、iPodの音楽配信でおなじみのiTunes StoreとおなじくDRM(デジタル著作権管理)というプロテクトはアップル独自の形式を用いるため、アップルから買った書籍を別の電子書籍リーダーで読むことは基本的にできない仕様となっているそうです。(他社製のリーダーにアップルがDRMをライセンスすれば別ですが)。このためせっかくオープンフォーマットを採用した利点が現状ではほとんど生かされていないのも事実です。

一方、Amazon独自のフォーマットのKindle booksですが、電子書籍市場の先駆者としての地盤が固まっていることと、これまでの1冊9.99$という低い価格設定のお陰で、今では45万冊以上の電子書籍が配信されています。一方のiPadはまだ約6万冊と、コンテンツ数においては圧倒的な差があります。

また、先ほどのiBooksの場合と異なり、“Kindleアプリ”というソフトを用いることで、iPadでもKindle booksを読むことができます。このソフトはAmazonが提供しており、今後多種多様な電子書籍リーダーが登場しても、同じ方法でKindle booksは様々な電子書籍リーダーで読めるであろうと予想されます。

しかし、一見、現状でiBooksに対して圧倒的に有利と思われるKindle booksですが、マイナス要因もあります。その最大の要因は書籍の価格の問題です。
これまでAmazonは1冊9.99$という低価格で、ほぼ独占的に電子書籍を販売してきましたが、Appleの参入によってそうした強気とも言える販売手法が難しくなったのです。

これまでも出版社はKindle booksの9.99$という上限価格と、価格に対するAmazon側の70%という取り分比率に大いに不満をもっていましたが、市場をAmazonがほぼ独占していたためしぶしぶ従ってきました。それがAppleの参入によって出版社側の選択肢が増えたのです。
これに慌てたためかどうかは不明ですが、Amazonは上限価格の事実上の撤廃と、Amazon側の取り分の比率を30%とすることに同意したということです。

ここまでのデータ形式についてまとめると、現状ではコンテンツ数、対応可能な書籍端末の点でAmazonのKindle booksが有利であるものの、iBooksのePubというオープンフォーマットの利点や書籍の価格の自由化の流れにより、AppleのiBooksにもこれから逆転のチャンスは大いにあるといったところではないでしょうか。

3.通信費

結論から言えば、この勝負はコストにおいてKindleの圧勝です。
理由はKindleが3Gネットワークを無料で利用できるからです。
無料で理由できるのには、もちろん理由があります。Kindleがモノクロ画面でシンプルなコンテンツしか扱えないからです。いわば、Kindleはコンテンツのシンプルさ、悪く言えば貧弱さを逆手にとって無料3Gというメリットをユーザーに提供可能にしていると言えます。

一方のiPadの3Gサービスは、データ通信料250MB/月のプランが14.99ドル(約1,350円)/月、データ通信量無制限で29.99ドル(約2,700円)/月だそうです。この価格は、米国の既存のデータサービスに比べると手頃なのだそうです。
いずれにせよ、自由にWeb閲覧でき、様々な種類のコンテンツを扱えるiPadで、Kindleのような無料の3G通信は望むべくもないのでした。

4.まとめ

ここまで3つの観点から両端末を比較しましたが、いかがでしたか?
私も電子書籍端末には大いに興味があるものの、今すぐに購入ということは考えていません。まだ日本語のコンテンツが皆無である上、電子書籍端末自体、まだ生まれて間もない過渡期的な要素が強いためです。

これからますます高機能、低価格な様々な端末が出現することでしょう。
将来、どの端末が主流となり勝利をおさめるのか、これからも注視して行きたいところです。

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