春の陽気に誘われて~お外で読書~

こんにちは、くわわです。
もうすぐ梅雨入りですね。チャリ通勤には辛い季節がやってきます。今から少し憂鬱です。

さて、今回取り上げるのは読書。私がネタに困ったときは読書です。平日も休日も私が毎日続けているのは読書だけ(それとビール)。天気のいい日は家の近くの川沿いに設けられたベンチに座って読書したりします。こういう時間って贅沢ですねえ。どんな高級レストランで食事するよりもこっちの自由を選んじゃいます。

最近私が読んで印象に残ったのは、
乃南アサの『風紋(上・下)』と『晩鐘(上・中・下)』です。

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この作品は二部作となっており、計5冊もあって、1冊が約500ページとかなり分厚いのですが、今月は休日が多かったこともあり、約1週間で読み終えました。

内容はフィクションですが、『犯罪被害者』という、社会の普遍的な問題をテーマにした作品です。

ある日、何処にでもいるような平凡な主婦が他殺体で発見されます。調べを進めるうちに犯人は主婦の次女が通う高校の男性教諭であることが判明し、そのスキャンダラスな事件に報道が過熱し、被害者家族と加害者家族の私生活が次々と暴かれていき、それぞれの家庭が崩壊していく…という内容です。

最初の『風紋』は殺された主婦の高校二年生の次女、真裕子の視点を主にして描かれていき、事件が起こった当日から、彼女の受けた衝撃や挫折、残された他の家族に対する反感などの生々しい心理状態が余すところなく映し出され、彼女が悩み苦しみながら少しずつ立ち直っていく姿を丁寧に描写していきます。

また、それと平行して、加害者となった男性教諭の妻、香織にも焦点があてられ、それまで夫と小さな子ども二人と共に小さな世界で幸せに生きてきた女性が突然、自分は何も悪いことをしていないのにも関わらず世間から糾弾され、つまはじきにされて凋落していく様子が冷静な筆致で描かれていきます。

また、大手新聞社に勤める社会部記者、建部の視点を通して犯罪事件の報道の在り方やしがらみなど、報道そのものの様々な決まりごとや問題点を細かく描写し、彼が悩み葛藤し、自問自答しながら記事にしていく様子を描くことによって、こういった犯罪被害者を題材にした作品によく見られる『報道=悪』という、単純な結び付きを排除して、読者に深く考えさせる幅を広げていきます。

そしてそういった人間の心の描写だけではなく、法廷の場に持ち込まれた加害者と被害者家族の対峙を通して読者は、裁判が実は必ずしも被害者のために行われているわけではないという事実を知るのです。 また、当初は犯行を認めていた加害者がある捜査の盲点をついて一転無罪を主張し始め、それによって二転三転していく法廷劇を追いかけることによって、読者を飽きさせないように工夫されているのです。

私が最近よく読むようになったいわゆる『警察小説』は、その多くが捜査員の視点から事件を見つめる内容ですが、この作品はそういった警察小説では脇役となりがちな、被害者とその家族、そして加害者の家族に焦点をあて、彼らが運命に翻弄される様子を丁寧に描いています。

そして後半の『晩鐘』では、事件から7年後、社会人となった真裕子と、それまでとは全く違う人生を歩みだした加害者の妻、香織、そして、自分の父親が人を殺したということを知らされず祖父母に育てられた二人の子供たちの生活を中心に話が進んでいきます。
そして新たな悲劇が次々と起こり、たとえどんなに時間が経っても、事件の影響というのは当事者や関係者が生きている限り、決してなくならないものであるという現実が改めて浮き彫りにされていくのです。

この作品を読んで感じたのは、犯罪被害者というのは、被害者の家族だけではなく、加害者本人以外すべての周りの人間をさすということ。そしてそれによって最も傷付くのはその中でも反論の出来ない弱い立場にいる人なのだということでした。

読んでも読んでも先が見えず答えの見つかることのない重いテーマの本ですが、それでも読者にページをめくらせる力がこの作品にはありました。そして物語の最後には一つの救いがあり、私をほっとさせてくれました。

この小説が最初に発表されたのは今から約20年前に遡りますが、その頃から比べても犯罪被害者は一向に減ることはありません。

しかも、情報伝達速度が飛躍的に増えた現在では、一旦何か事件が起こると瞬く間に情報が拡散し、当事者や周りの人間の生活を一変させてしまうことも珍しくありません。

誰でも瞬時に加害者になり、被害者にもなってしまう。
今はそんな時代になったのですね。

深く考えさせる作品に出会い、柄にもなく心が沈み込みそうになった私を救ってくれたのは5月の爽やかな陽気です。
一年のうちで最も過ごしやすいこの季節。いや~、癒されました。この季節に読んでよかった。
おすすめですよ、お外で読書。重めの内容の本は特に。
ただし虫除け対策は万全にしてくださいね。

それではまた来月お会いしましょう。
くわわでした。

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