「印刷」ホテル  組版よもやま話(その9)

 お客様よりお預かりした原稿を拝見することでお給料を頂いている「window-tribe」です。

 私たちの仕事はホテルに例えますと、「原稿様」にお泊り頂いて、チェックインでご滞在目的を伺い、コンシェルジュデスクであんな事やこんな事など様々なサービスを提案致しまして、厨房でシェフたちが「印刷物」に仕上げて、気持ちよくチェックアウトして頂く・・・

 などと申しますとこじつけがましいのですが、お客様のご要望は一夜の宿でよいホテルから、ワクワクするためにそこに行くことが目的の超高級ホテルのように千差万別です。

 私などはそれぞれの目的のお客様のご要望に沿うために、人生ゴールが見えてもまだまだ道半ばと反省する毎日を送っています。

 先だって終わった「崖っぷちホテル」というドラマも感情移入しながら見ていましたが、実際、あっちこっちに旅に行った折にホテルの従業員の方の振る舞いから多くを学ばせていただいています。

「左利き」ゆえに見える事。

 実は私は「左利き」なのですが、以前、野リゾートの宿で夕食の席に着きますと最初から箸が「左利き用」に配膳されていました。そのサービスに気付く私も只者ではないのですが、「どこで左利きと気付かれました?」と聞くと「宿帳を書かれる時に左手でペンを持たれていたとフロントから知らせがありました」とのことで、「気付き」-「情報共有」-「実践」が一連となされていました。

 また「慇懃無礼(いんぎんぶれい)」の代名詞のようにいわれるホテルクラのレストランの出来事では、席に通されカトラリーが右利き用に並んでいるのはどこでもある通常の事ですので気に留めないのですが、食事が始まり私が外側のナイフとフォークを持ち替えて手にした直後に黒服の女性スタッフがスッと背後にやって来て、残った内側のカトラリーを全部左右入れ替えてくれました。ここで感心したのはその「」でしょうか。早すぎるとびっくりしますし、遅いからと言って気付かないより良いのですがここでは「自然に」というか「寄り添う」というか、慇懃無礼ではなく「洗練」されたサービスの真髄を垣間見る事ができました。

 他のレストランでなどに行ってもスタッフそれぞれの思いでサービスを受ける事があります。そのためにはお客様の小さな仕草も見逃がさないように「観察」するわけですが、良く見てくれているとはいえ、それが過ぎるとかえって視線を感じる事があって「見張られている」と受け取られる事もありますので、そう思わせない絶妙な「間」の大切さを感じました。

 そしてこの両方の日本有数の旅館とホテルで出会う事のできたスタッフさんは20代~30代と見受けられる若い世代なのですが、上に立つ人のトップダウンの理念と、若いスタッフの自らの仕事像を追求するボトムアップの姿勢が融合したように見えました。

旅行サイトの星印評価で考える

 「楽天トラベル」や「一休」のサイトで評価欄の星の数を見ることがあるのですが、私が見るのは星五つの高評価は社交辞令要素もあるので参考にせず、星一つの低い評価の書き込みに注目します。本当の声はここに集約されていると考えて、何をやってお客様の期待に沿う事が出来なかったのかを反面教師で学ぶ事ができます。

 「メールでの注文が通っていなかった」「隣の部屋がうるさい」「禁煙室で予約したのに喫煙室に通された」「水回りの清掃が行き届いていない」などごもっともなお叱りがあり、中には本当に「不当なクレーム」も有ったりするのですが、それさえも「満足」に変えることが出来れば大きなビジネスチャンスとも言えます。

 星の多い上位の事柄を改善するのは「やるべき事・考えられる事はやっている」グループですので改善する余地があまりないし、有っても大きなエネルギーがいるのは短距離100m走の1/100秒を縮めるみたいな感じですが、星の少ない下位の事柄は短距離で例えると手の振り方、足の運び方などでフォームを直すなど「未熟な点を気づき」さえすれば星の一つや二つ位は大きくジャンプアップできる可能性を秘めていますので「底上げ」の方が容易に全体のポイントを嵩上げすることが出来ます。

 またトップグループの「実力者・名人」と呼ばれる人でそのホテルを評価するのではなく、どのスタッフが顧客と対応するか分かりませんので、「ボトムにいる名の知れない人材」の質がそのホテルの「本当の実力」だという見方もできます。

「原稿様」をおもてなしする。

 仕事を離れている間にもそのような事を学ぶのですが、印刷の仕事に立ち返りますと、どれだけ「発注者様・執筆者様」に寄り添えているのか自問自答の日々です。
 毎回発注いただけるお客様には「いつもの奴で」風に多くを語って頂かなくても通じて、久しくご贔屓を頂けているお得意様もありますが、反面、ご評価いただけてない所は声を出される事なく去られたのではと思うようにしています。

 原稿を拝見していますと、明らかな間違いや、差別用語の使用、計算が合わないなど気付いた折には校正紙上に伺いをたてるなど確認をさせて頂いています。
 この取り組み当初の頃は原稿の間違えを「〇〇なのです」調で頭ごなしに書いて校正に出すような者もいたりして、待て待てと慌てたりしましたが、今では「〇〇と思われますのでご確認願います」という主役は執筆者様で我々はお手伝いするというスタンスを取っています。

 「帳票類」を作成する折には、住所などはマンション名がハイカラな横文字で文字数が多いケースもあるので記入欄を広め・長めにスペースを割いたりするなど、枠内に何文字書かれるのかを考えながら使いやすい伝票類を考えます。

 「名刺」はあの小さなスペースに「使われる方の品格」を詰め込むわけですので、私は「名刺は小さな宇宙じゃ」とか意味不明な事を言いながらオペレーターさんを困らせたりします。前回とそのまま同じ内容で作成するのを社内では「再版」いうのですが、前回作成時に文字が不揃いで調和が崩れてなかったのかと迫ることもあります。それは前回、私が見落としていたという事にもなりますので、痛し痒しですが、「継続的改善」といいながらその場を取り繕い、「揃えられる所は揃える」ようにします。

 また、表現が受け手の「読者」にどう解釈されるかという視点でも見ることがあります。「、」一つで文章の意味が変わるとも言いますが、以前、実際にお客様より「点が一つないだけで書いた人の人格が疑われる」というお言葉を頂戴した事があります。注意を受けると反発する者も居たりするのが世の常ですが、この一言は私の人生修行の指針、座右の銘の一つとして頂戴して、周りの者にもクドクドと聞かせつつ修行を続ける日々です。

 ポスターなども単品で見ると「上品」に出来たと思えても、雑然とした掲示板に張られた使用場面において、道行く人達に自己主張ができるのかなどの「作品」ではなく「伝えるという実用性」でも検討しないといけません。そのためには「下品さインパクト」という観点で周囲を説得することもあります。

 最近の注意点としますと「平成」の時代が幕を閉じるのもあとわずかですので、帳票類で「平成」と入っていましたら元号の扱いをそのまま平成でいくのか、はたまた空けておくのかお伺いもしないといけません。

 前のブログで書きましたように、私などが「昔はのう・・・」などと言いましても「今はそうじゃないです」と言い返される、どこにでもある世代間ギャップに頭を抱える事もある中で、時代に即したサービスを前述の理想に燃えるホテルマンに見習い、追いついていかないといけません。

 印刷ホテル「ニシキプリント」に原稿様がお泊りの折には、至らぬ点、不勉強な点を是非お聞かせ願います。

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