しまなみサイクリング入門(8) 大三島1周サイクリング with うさぎの島編

 だらだら書いてきたしまなみ海道サイクリングの記事ですが、各島紹介もようやく県境を越えて、今回は愛媛県の今治市にあたる「大三島」の紹介をします。

 いつもでしたら島伝いに橋を渡った所から各島一周のスタートをするのですが、今回はちょっとアプローチを変えてみます。なにも毎回正直に尾道を経由しないといけないわけでもありませんので、竹原市の忠海港から7時半始発の「うさぎの島」大久野島経由のフェリーで大三島の北東部に位置する盛港に向かいます。久しぶりの忠海港ですが、無料の駐車場は満杯でチョッとはなれた第二駐車場に車をおいて折畳み自転車を展開します。

 日本国内の観光名所に飽きた外国人観光客が新たなターゲットとして大久野島を一気に盛り上げて下さったようで、建物もコンパクトながらお洒落になってグッズも多く売られていて驚きです。そのうえ大久野島の前にわざわざ「うさぎの島」と前置きしてアナウンスされるようになっており、宮島の鹿と双璧をなす動物観光大使ぶりです。 この大久野島は帰途に時間があれば立ち寄る事にして、以前紹介したサイクリングの味方の割引チケット「サイクルーズPASS」を使って大三島1周に向かいます。

 途中大久野島で大半の乗客が下船して、忠海から30分ほどで盛港に到着です。

 ここから愛媛県最大の「大三島」の外周、距離にして40kmちょっとの予定で、シーサイドを反時計回りで走り出しますが、竹原のコンビニで買っておいた冷凍食品のうどんが適度に解けてきたので、海辺で携帯コンロを出して、お握りと共に爽やかに朝食にします。この開放感がたまりませんが、食べ終わったところで蚊に数箇所噛まれていました。

 朝食が終わって走り出しますが、海辺とお別れして山あいに向けて登り勾配が始まります。朝食後に脇腹が痛い感じですが、路傍に大きな鳥の影を発見で一休みして観察しますとキジのようで、この非日常感で儲けた気分になります。

 ところがこの先の大三島の西岸を進むと、予想していなかった、あまり歓迎できない生き物との遭遇にびっくりです。行った日は7月初旬なのですが、随所でカニが道路上にペチャンコになっています。それもダンプカーが通ったりしますので、おびただしい数でこればかりは写真は撮りませんでしたが、生きているカニは赤い爪が特徴で、帰って調べるとその名も「アカテガニ」というそのまんまの名前でした。

 Wiki先生を見ていると乾燥に強いカニのようで僅かな水を循環させてエラ呼吸するそうで普段の生活は意外にも山中に潜んでいたようで、却って水中では溺れるとまで書かれています。

 ところがそんなカニが何故に命の危険を賭けてまで道路を横断するのかという理由は、卵から幼生に孵るには、こればかりは水中でないといけないらしく産卵のための移動なのですが、それがこの時期に一斉に道路を横断して海に向かった理由だそうです。

 そんなことで、結構登ったところでもその姿が見られ、私も何度も目の前を横切られて轢きそうになって危なっかしかったですので、この時期の大三島だけは、あまりお奨めではないです。

 そんな感じでお店も観光名所もない大三島の北東部分をカニを避けながら消化して、最大の観光名所「大山祇神社」に向けてペダルをこぎ宮浦港に着きます。しまなみ架橋される前はここが大山祇神社の門前として尾道や松山からの航路で大いに賑わっていたようですが、その面影を少しばかり見ることができます。

 ここから山側に少々走ると大山祇神社に到着します。海と山々を守り、戦いの神様として崇められて、多くの武将から刀剣、甲冑、弓矢など武具の寄進を受けて、とりわけ国宝・重文指定の甲冑の4割が収蔵されているそうで、大三島が「国宝の島」と言われる由縁です。境内中央にある「乎千命御手植の楠」の老木も神秘的で必見です。

 さすがにこの辺りになると土産物店などのお店が見受けられ、飲食店では神社のまん前の食事処「大漁」は海鮮丼が有名で行列必至です。私の場合は忙しなく駆け抜ける事が多いので行けていませんが、いつかは行ってみようと思います。 ここから宮浦港側に参道をちょっと入るとパンダが呼び込みをしている「猪骨ラーメン」というお店があり、ここは別の時に立ち寄っています。醤油、塩、味噌の三つの味がありますが、この時は塩を頂きました。四角い上品な丼に入ってやってきましたが、この場所でこのような上品なラーメンが頂けるとは思っていませんでした。

 ただ気になるのは説明書きに「嫌な臭みはありません」の文字で、それだったら別に猪である必要も無い気がしたのですが、島の団栗や柑橘を食べて育った猪は脂身に上品な甘みがあるそうで、違いが分かるようになるまで数回通わないといけないようです。 ここからもうちょっと宮浦側に行くと、昨年、文化功労者を授章された建築家の伊東豊雄先生の指導で旧法務局をリノベーションしたカフェ「大三島みんなの家」となります。外観は古い感じですが、店内はお洒落に仕上げられています。行った時にはランチが丁度品切れでカレーにしましたが、彩が豊かでした。ただし建築関係の馴染みの方と一般観光客との扱いに若干の違和感があった感じで、もっと良くなる要素があります。 しばらく人里にひたって、西岸の南側に向かって漕ぎ出します。宮浦の南側を少々内陸寄り進みますが、海沿いには「伯方の塩」の大三島工場や温浴施設の「マーレ・グラッシア大三島」などがあるそうです。

 西岸北側よりカニは減りましたが、それでも所々で出会います。進むにつれてアップダウンが増えてくるような感じでしたが、以前今治の帰りに立ち寄った現代彫刻を中心に展示してある「ところミュージアム大三島」に到着です。前回は開館時間前に来たので入れませんでしたが、いよいよ入館できます。変わった名前ですが実業家の所敦夫氏の寄贈で作られたそうです。

 小高い道路沿いに入り口があり自動ドアの男女の顔が引っ付いたり離れたりしますが、入館しますと斜面という地形を利用して海側に向かって階段状に展示室が設けられ下って行くように作られています。
http://museum.city.imabari.ehime.jp/tokoro/

 私のようにアートに心得のない者でも、木で作られた「KIOSK3・4番ホーム」と言う実物大の駅の売店をモチーフにした作品の中でも、とりわけ店先の商品の精巧さに見入ってしまいました。 

 海が一番近い最下層のオープンデッキではセルフサービスでコーヒーを入れて飲めるのですが、対岸の大崎上島を眺めながら、思いのほか豊かなひと時が過ごせます。

 ここからちょっと進むと「伊東豊雄建築ミュージアム」となります。黒っぽい多角形で構成された「スティールハット」と、伊東先生の自宅を再生したという「シルバーハット」の2棟の建物があります。この時はヤマハの新デザインの発表会が有ったようで「シルバーハット」の方には行けませんでしたが、国内でも最先端のデザイン集団も集う場所と言えます。
http://www.tima-imabari.jp/

 見る角度によって様々な表情を見せる「スティールハット」館内では、外観に比例して内部空間も独創的で、その壁面に伊東先生の作品展示がありますが、とりわけ大三島の島興しに関わった部分では、イベントなどのプランニングの参考になります。

 ここから南に進むと大三島の最南端エリアに入り、今治港と結ばれている宗方港から、なおも先に進むと宗方小学校の廃校を利用した「大三島 ふるさと憩いの家」と「岩田健 母と子のミュージアム」となります。
 古い小学校を使った施設で、天気の良い時は空の青、雲の白、後背の山の緑に校舎が映えていい景色です。プライベートビーチ併設で、向こう側を望遠で覗くと長大な来島海峡大橋が望めます。ここは映画「船を降りたら彼女の島」のロケ地だったそうで、宿泊も出来てますが、昨年リニューアルもされたようです。

https://www.ikoinoie.co.jp/

 母と子のミュージアムは伊東先生設計の円形の美術館で、内部はオープンエアの庭に親子の絆を感じる事ができる彫刻群が展示されています。

http://museum.city.imabari.ehime.jp/iwata/

 ここからは大三島の南岸を海と山を眺めながら、地形に沿って登ったり下ったり曲がったりしてひたすら東岸側に向けて修行していきます。


 一汗かいた所で、ミカン畑の中に見落としそうな立ち寄りスポットが現れます。ハンドドリップで一杯ずつ淹れてくれる「オミシマコーヒー焙煎所」というコーヒー専門店です。
http://omishimacoffee.com/

 メニューにはコーヒー産地の説明と酸味・甘みの説明もあったりしますが、無難にブレンドをオーダーしました。

 実は私はからっきしコーヒー音痴で、最近はやっと日本酒では醸造関係の方と背伸びして10分位なら会話できるまで勉強したのですが、コーヒーはいまだに「黒くて苦いお湯」の域を出ていませんので、これから語れるように勉強しないといけません。ただし、ここのプリンは掛け値なしに絶品ですので、これだけで立ち寄る価値があります。
 一休みが済んで、一山越えると大三島の東岸エリアになり、しまなみサイクリングの推奨ルートに入ります。起伏の無いまま突っ走るとスタート地点の盛港まで行けてしまいますが、ちょっとばかり寄り道しながら行ってみます。

 メインの道に傍らに小さく「リモーネ Limone」という青い看板が出て、示されるままに路地を入って行くと、民家を改装したお店にたどり着きます。

 柑橘農家さんが営んでおられるお店で、店名はイタリア語で「レモン」の事です。目立たない所にあるお店ですが、ジャム・ママレード、ケーキ類、リキュールなど扱っていて、ガイドブックでは常連組の有名店です。ジャム類は嵩張らないのでしまなみサイクリングのお土産によく買って帰ります。
http://www.limone2.com/

 メインの道路に戻り、海側に目を向けますと、どんどん多々羅大橋に近づいてくるのですが、その手前に、陸からほんの近くに小さな島が見えます。古城島といって、日本最古の水軍城の甘崎城跡です。汐が引いたときに陸繋島になる事があり、海中から石垣が姿を現す事があるそうですが、まだお目にかかれていませんし、ほんの短時間で渡る事も危険なので薦められていません。

 この日のサイクリングは当初カニに悩まされながらスタートしましたが、南岸から東岸になってカニを見かけることも無く推奨ルートを快調に進み、「道の駅多々羅しまなみ公園」に到着します。

 大三島は愛媛県ですので随所にゆるキャラの「みきゃん」が姿を現します。彼には敵役の腐ったミカンをイメージした「ダークみきゃん」も存在しますが、「バリィさん」との二大ゆるキャラを擁する愛媛県に対し広島県は大きく遅れをとった感じです。
https://www.pref.ehime.jp/h12200/mican-kanzume/index.html

 愛媛県で一番大きな外周約40kmの大三島ですが、下の写真で見える多々羅大橋から左上の大三島橋までの、たった4km程がしまなみ海道サイクリングの推奨ルートでしかないので、今回のサイクリングは普段では見られない多くの物が見る事が出来たと振り返る事が出来ます。

 記念撮影スポットとしては「サイクリストの聖地記念碑」があり、ここの金属板で作られた人型自転車スタンドが撮影にはうってつけです。「6人のシクロ・ツーリスト」と言う作品名があるのですが、そのうち4種がここに設置されています。


 今回はフェリーでやって来た設定ですが、大三島の観光スポットとしては多々羅大橋は外せませんので簡単に紹介しておきます。

 広島県の尾道市の生口島との間に架橋された全長1,480 mの斜張橋で完成時は世界最長の斜張橋だったそうですが、いまでは順位が下がっているそうです。中央部に県境のラインが引かれています。

 特徴的な逆Y字型の主塔の海面からの高さは220mで50階建てビルの相当します。以前この主塔の頂上に上がれるイベントに応募しましたが見事に外れました。

 主塔の下の部分では手を叩くなど音を出すと反響する「鳴き龍現象」がおきます。
 さて「道の駅多々羅しまなみ公園」を出て平坦な道を北上しますとスタート地点の盛港に戻って大三島1周の完成です。

 帰りのフェリーでは「うさぎの島」大久野島に途中下船します。久々の来島なのですが、港からウサギたちが出迎えてくれます。餌を持参の人には二本足で立って大歓迎してくれる気合の入りようです。

 


 海辺にはウサギの耳の形をしたオブジェが有ったりしましたが、実は中に頭を入れられるようになっていてウサギの耳を実体験できるようになっており、なんと対岸の人の話し声まで聞こえます(ウソです)。

 環境省所管の「ビジターセンター」ではウサギ以外の自然や歴史文化も展示されています。丁度その頃、私は広島大学のビオトープでトンボの写真を撮ったりしていたので、トンボの展示は大変興味深かったです。


 ウサギに目がいきがちですが、戦時中は軍事施設として「毒ガスの島」「地図に載っていない島」としての負の遺産としての一面が有り、資料館や当時の遺構が語りかけてきますので、学びの多い島といえます。

 次回は愛媛県の2つ目の島、伯方島を紹介します。

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